2008.7月〜
2008.1月〜2008.6月
2007.7月〜2007.12月
2007.1月〜2007.6月
2006.7月〜2006.12月
2006.1月〜2006.6月
2005.8月〜2005.12月
2004.12月〜2005.7月
「21世紀のラリック」の作品集(2008.6.30)
山口 遼氏が「21世紀のラリック」と評価するイギリスのジュエリーデザイナー、ケビン・コーツの作品集がこのほど発刊されました。
以下、山口氏の推薦文(抜粋)です。
「英国にケヴィン・コーツという凄い宝飾デザイナーがいる、と私が言い出してからもう10年になる。周りからそれが見たい買いたいとせがまれてきたが、どこの本や雑誌、図録にも載ってないし、もちろん実物もないのだ。それがこの本の出版でやっと、内容だけは見ることが出来るようになるのは、私としては大変に嬉しい。ジュエリー・フアンなら、そしてこの道を志す人なら、絶対に買うべき本である。
彼のジュエリーは間違いなく”21世紀のラリック”となる。実物はともかく、まずはこの本でその凄みを味わって貰いたいと思い、ここに紹介する」。
●著者 ケヴィン・コーツ、エリザベス・ゴーニング他共著
●発行 独Arnoldsche Verlagsanstalt 
●体裁 215x325ミリ 316頁 オールカラー(写真400点)
●定価 14,700円(予価)
ご注文は柏書店松原株式会社
〒160-0003 東京都新宿区本塩町21松原ビル
www.kashiwa-books.co.jp
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Tel(03)3353-0181 Fax(03)3353-4599



ホンモノだけが残る時代(2008.6/28)
6/27の日経MJによると、「ナラカミーチェ」「さが美」が宝飾品販売から撤退するようです。ヤマノホールディングスも傘下のサトウダイヤモンドチェーンを売却しましたから、ファッション、呉服関連がこぞって宝飾部門をクローズすることになります。
これをもって、宝飾品不況とまとめることは簡単ですが、わたしの見方は違います。
かつて、「さが美」が青山にリフォーム専門店「BeJ」を華々しくオープンさせ、注目を集めたことがあります。しかし、その後は鳴かず飛ばずで、いつのまにか閉店していました。吉祥寺で再起しましたが、それもあっというまの閉店です。
見ていて、問題は明らかでした。
スタッフがプロではない。
だいたい、ファッションや呉服から進出してきたところは、宝飾品を甘く見ています。材料、デザイン、加工という宝飾品の基本への理解が、決定的に不足しています。今日の事態は、必然の結果です。
ホンモノでさへ厳しい時代です。中途半端なところが生き残れるわけがありません。


ナラカミーチェのヒット商品「メッサジオ

ダイヤモンドの国際価格と日本の価格(2008.6/24)
高品質ダイヤモンドの国際価格がジワジワと上がっていることは、5/26のこのH.P.でも書きましたが、では日本の取引相場と国際価格の関係がどうなっているかです。
ご存知だと思いますが、いま日本のもっともリアルなダイヤモンド取引価格は、「市」とか「会」と呼ばれる「仲間取引」がリードしています。
そのなかの、ごく一部と、ラパポート掲載の「asking price」を比較したのが下の表です。
「asking price」というのは、文字通りask出来るプライスで、実際の取引は「ウチは×0.7とか、これは×0.75」という交渉で売買されます。あくまでこれはasking priceと比較したものですが(2008.5月)、日本の取引価格は見てのとおりほぼ5掛です。
実際の欧米の取引価格が×0.7としても、約20%日本の取引価格は下回っていることになります。
これ以上は言えませんが、ここにはたいへんなビジネス・チャンスが眠っています。

石目 カラー クラリティ カット ガイ単価 ラパ価格(ドル/ct) ラパ価格を円換算
(105円/ドル)
市価格/ラパ価格
0.312 D VS2 VG 135,000 2,700 283,500 0.476190476
0.514 E VS2 Good 220,000 3,800 399,000 0.551378446
1.004 D VS2 Good 473,000 8,700 913,500 0.517788725



「欧ブランド値下げ機運」(2008.6/20)
こういう見出しで、外資ブランドショップが価格の見直しに着手していることを伝えています(6/18の朝日新聞)。
それによると、グッチが3月に約10%、4月にも6.6%値下げし、フェラガモがバッグ15品目を10%、靴27品目を7%値下げしたとのこと。
ルイヴィトンは5月に平均1.5%値上げしましたが、ただしこの値上げは07年7月以来で、これまで年2回値上げしてきたのがここにきて鈍っているそうです。
ユーロは過去3年で25%値上がりし、そのため日本でのこうしたブランド品の価格も、為替に連動して高くなってきました。
しかし、ここに来ての価格見直し=値下げの動きは何故なのか。
この記事は販売現場の意見として「売れていないから」と端的に結論付けています。いまの日本の消費状況では、ブランド品の価格は割高で、このままでは顧客離れが進むという危機感が彼らにはあるようです。
そんななか、6/21に、ルイヴィトンは松屋銀座店の1階に、時計・宝飾品専門店「ウォッチ&ファインジュエリーサロン」をオーップンさせます(写真右)。LVMHにはデビアスが入っていますが、ヴィトン独自の宝飾品展開がいよいよ本格化するわけで、外資の意気軒昂は簡単には収まりそうにありません。


宝飾品の新シリーズ「アルダント」のネックレス。4億7250万円で、花びらの形にカットされたダイヤモンド1145個をあしらっている。

プロポーズが出来ない男たち(2008.6/16)
男性から女性へのプロポーズというのは、元来プロポーズの正しい形のように思われています。ところが、そんな“正しいプロポーズ”が日本では危機だといいます。男性から女性へのプロポーズに関する調査で、女性の約8割が “プロポーズが出来ない男性が増えていると思う”と回答。特に20代女性の82.7%がそう感じているとのこと(ブライダル関連企業の調査、yahoo掲載)。
なぜ男性がプロポーズできないのかという質問に対しては、“二人の恋愛関係において男性に主導権がないから” という声が4割あったそうです。
また、プロポーズにかける予算(エンゲージリング&演出費)は?」という質問には、男性の6割、女性のほぼ5割が「20万円未満」と回答。“給料の3ヶ月分”というエンゲージリング神話も今はない模様だと、このレポートは伝えています。
6/3の記事と繋がることですが、これまでと大きく異なる消費性向とパーソナリティを持った若者世代が、日本には誕生しつつあるのかもしれません。




止める会社と止められない会社(2008.6/11)
ここに来て、甲府の大手2社が、清算手続きに入りました。セイコージュエリーがこの前清算したばかりですが、今回のこの2社については、業界関係者もかなり深刻に受け止めています。「出来れば、ウチもそうしたいのだが」といった切実な声も聞こえてきます。
ある社長は、ため息とともに、こんな風に嘆いていました。
「清算出来るところはいいよ。ウチは、清算したくても出来ないんだ」。
おそらく、ほとんどの会社は、同じ事情から清算出来ないでいると思います。借金が足枷です。
こういう状況に大多数のところが置かれていますが、しかしまったく逆のところも存在します。
ジュエルReクラブのメンバー店の1社は、今期は前年比2ケタアップです。内訳は、物販とリフォーム、それに地金買取で、きちんと実績を残しています。他にもこういう店があり、何が違うのかということで、いろいろ言葉を探していたのですが、つまるところ「まじめに、誠実にやっている」ということしか見つかりませんでした。
それでは、他はまじめではないのかということになりますが、他に適切な言い方がみつからないのです。
あと、「勉強熱心」ということもあります。



“背伸び消費”縮む(2008.6/3)
こういう見出しで、高級ブランド品や宝飾・時計・輸入車など高額消費の冷え込みが目立ってきたと、6/2の日経MJがトップで報じています。
実態としては大体書かれている通りなのでしょうが、気になるのはこの縮む“背伸び消費”という言葉で指摘された、最近の20〜30代若者の消費動向です。
じつは、5/31のテレビ東京の久米弘がアンカーを務めた特番で、いまの20代を中心とする若者が、クルマや高級ブランドに興味を示さなくなっていると指摘し、これらの若者を「新ニッポン人」と呼んで、彼らの考え方や背景を考察していました。
彼らの消費傾向は、いわば“等身大”消費ということになるのでしょうが、この2つの報道は、構成はまったく違うのですが、奇しくも同質の指摘をしていたように思います。
今後、この議論は、さまざまな切り口で繰り返されていくことになるでしょうが、より広範な調査を実施し、果たして本当にそうなのか、これまでの世代とどう違うのかについて、もっと厳密な分析が必要になりそうです。

「日経MJ」より


ネット通販に卸売り(5/30)
甲府の大手ジュエリーメーカー「ラッキー商会」が、ネット通販業者向けに、宝飾品卸売りサイトの運営を本格化します(5/28「日経MJ)。
宝飾品を女性モデルが着用した写真や「50%OFF」といった広告などの画像を用意し、会員企業に無料で貸し出すというもので、通販各社は扱いたい宝飾品の関連画像を選び、自社サイトに張り付ければ宝飾品販売に参入できるというもの。
ネット通販会社が運営サイトで消費者から注文を得た後にラッキー商会が商品をネット通販会社に発送し、クレジットカードで決済する。
ネット通販会社は在庫負担がなく、ラッキー商会にも決済リスクがない。
入会は無料で、小規模通販サイトを運営している業者には歓迎されるかもしれません。
しかし、ネットサーフィンをする消費者は、あちこちで同じ画像のジュエリーサイトを眼にすることになるわけで、それがどう受け止められることになるか。
詳細はコチラ



ダイヤモンドにも神風?(5/26)
5/22の読売新聞朝刊はアフリカ特集を組み、その第一回目としてアフリカの地下資源を取り上げ、そのなかでダイヤモンドの現況をレポートしています。
そこで語られていることは、「昨年、宝石用の高級ダイヤの価格は前年比で約2割上昇した。経済成長著しい中国、インド、ロシアでの需要増で、今後10年間で5割上がると予想される」という内容。
どこを情報源として、こういう記事が作成されたのかはわかりませんが、まんざら的外れでもなさそうです。というのも、業界のプロたちも、最近こういうことをヒソヒソと言い始めているからです。
ここでいう「宝石用高級ダイヤ」というのは、2キャラットアップ、Fカラー以上ですが、明らかにこのランクのダイヤモンドには品薄感があり、世界の取引相場もジワジワと値上がりしています。
おそらくそこには、読売が指摘する新興国の需要増に加えて、新しい投資先を求めて世界を駆け巡る投資ファンドの影響も絡んできているのでしょうが、この動きを自社のビジネスにどう結び付けられるのか。
業界経営者の手腕が試されるときかもしれません。



「フォーエバーマーク」の迷走(5/22)
デビアスグループが、このほど「フォーエバーマーク」をダイヤモンドの世界的なトップブランドとして構築するための「革新的な新計画を世界で導入する」と発表しました。
詳細は省きますが、しかし何が「革新的」で、「世界で」といっても欧米が入ってなくて何が「世界」なのかなど、さっぱり要領を得ない発表となっています。
極め付きは、「フォーエバーマーク」が付与される、彼らが言う「厳選されたダイヤモンド」の条件が、クラリティSI2以上、0.18ct以上、Jカラー以上だというのですが、これって本気で言っているのでしょうか?
業界ではSI2以下は「ピケ石」と呼び、Jカラー以下は「色甘」と呼んで評価を大きく下げます。デビアスが言わなくても、業界自体がそもそもこれらのランクのダイヤモンドを評価していないのです。
0.18ct以上に到っては、何をかいわんや、です。
要するに、この基準でいけば大体のダイヤモンドが「厳選されたダイヤモンド」になってしまうわけで、「フォーエバーマーク」で一体何を差別化しようとしているのか、まったく見えてきません。

「ラッキー商会」の人材確保戦略(5/14)
甲府の大手ジュエリーメーカーであるラッキー商会が、宝飾品のデザイン塾を開き、自前で人材確保に向けた活動を開始したそうです(5/9、「日経MJ」)。
主にCADの講習をすることで、授業料も取りながら、優秀な人材確保を狙っていく考えで、背景には美大卒の応募者が、アパレルなどの大量採用で、宝飾企業に回ってこなくなっていることがあると説明しています。
ただ、考えてみれば、甲府には「山梨宝石美術学校」があり、CADも教えています。宝石美術学校の卒業生が、引く手あまたで、奪い合いになっているなどという話は、逆の話はあっても、聞いたことがありません。
ということから見えてくることは…。
甲府も、なかなか一枚岩になれないということなのでしょうか。


↑ラッキー商会本社




タイプT、タイプUの判別機(5/9)
ダイヤモンドの分類について、最近は、窒素を含むT型と含まないU型に分けることができるといわれます。またさらにT型とU型のそれぞれは、a型とb型の2つに分けることができるといいます。
詳細は専門家に任せるとして、ただ押さえておかなければならないこととして、TypeUのダイヤモンドにHPHT処理(高温高圧処理)をし、ブラウン味を抜いて、より無色に近づけるような色の改善をおこなったダイヤモンドが、一部に流通しはじめていることです。
この報告をおこなっているのは、諏訪貿易の原田さんが書かれているブログ上ですが、同時に氏は、右のタイプT、タイプUの判別機を紹介されています。
ダイヤモンドについては、ともかく最新情報をいつも押さえておくことが重要で、氏のブログにはいつもそうした情報が掲載されています。




乾 碩巳氏の近況(4/13)
このホームページの「お勧め掲示板&ブログ」にも案内していましたので、読まれていた方もいらっしゃると思いますが、「ライン河畔とアルプス山麓の珠玉たち」というレポートを10日毎にアップされていたヨーロッパ在住のダイヤモンド業者で、乾 碩巳氏という方がいらっしゃいます。
わたしは、最近はたまにしか読んでいなかったためわからなかったのですが、読者からの指摘で今年から更新されていないことを知り、2月頃だったと思いますが、「お勧め」から外しました。
その乾氏の近況を、最近知りました。
なんと、乾氏はある事故で意識不明となり、現在はフランスの病院の集中治療室に
入っておられるそうです。
氏は、ある意味、天涯孤独な方ですので、誰も見舞いにも来ていないのかもしれません。
いろんな話はあるようですが、それは別にして、ヨーロッパの病室で、いま氏の脳裏には、氏のレポートに毎回添付されていたライン河畔と、アルプスの風景が巡るばかりなのかと思ったりしています。
一遍のドラマを見るような、一人のすぐれた業界人の生き様を想います。




どうやって作ったのかわからないジュエリーの魅力(3/21)
この石留めはどうやっているのか、この形はキャストでは無理だし、寄せものでもかなり難しいはずだけどなァ、この表面のテクスチュアは何を使って出しているのか…。
極めて稀ですが、一見しただけではその作り方がわからない、そういうジュエリーに出会うことがあります。しかもそこに、これまでなかった新しい美しさが備わっていれば、それは心躍るジュエリー体験となります。
新しい技術に裏打ちされた、これまでなかった美しさを持ったジュエリー。
日本が、世界のジュエリーと競い合って、拠って立つべき基盤を見つけることが出来るとすれば、そのひとつはおそらくこの分野だと思われます。2/29の記事でも書いた「技術が作るデザイン」ということですが、ここにチャレンジする人材が待望されます。
右はそのひとり。
中島 凪氏の作品ですが、氏の作品も含めたデザイナーの新しい取組みがスタートしました。「チーム・デザイナーズ・プロジェクト」という名称で、このプロジェクトには、日本のジュエリーの新しい息吹が感じられるはずです。



上場メリットと上場デメリット(3/17)
右のグラフは、宝飾業界を代表する上場会社2社の最近の株価推移です。半端ではない値下がりです。
べつにこの2社にとどまらず、他の宝飾関連上場会社の株価も、ほぼ似たような値下がり状態が続いています。
これらの会社社長は、ここしばらくは寝てもいられない状況なのでしょうが、ときどきは「上場なんかするんじゃなかった」と後悔することも稀ではないのではないでしょうか。
上場メリットの第一は市場からの資金調達ですが、こういう株価になっていくと、市場からの資金調達が出来ないばかりか、銀行からの借り入れも容易ではなくなります。何のいいこともないわけで、デメリットばかりが一気に表面化する事態です。
そんな状況を受けてか、そのうちの1社は「自己株式買付」というのを最近行っているようです。株式市場からの影響リスクを抑制する施策といえますが、自社で買うには資金が必要で、一般にこういう施策は内部留保資金が潤沢で、M&Aの対象にされそうな会社が、リスク・ヘッジするために行うものです。
真意はどこにあるのか。
ここ当分は、上場会社の迷走が続きそうです。





「犯罪収益移転防止法」による影響(3/13)
今月3/1から、上記の法律施行がスタートしています。一般的に「マネーロンダリング法」と言われるこの法律で行政が意図しているのは、端的に言って「脱税摘発による税収確保」と言っていいと思います。
この法律は、代金の支払いが200万円を超える宝石・貴金属等の売買契約の締結について、本人確認を義務付けるというものですが、これによって貴金属地金等の売買では、かなり影響が出るのではないかと言われています。
「犯罪収益」という用語に問題がありますが、資産の一部を金地金等で保持する資産家は、日本にも、世界にも数多く存在します。またそれが、脱税の隠れ蓑になっているという指摘も、おそらく当たっているのでしょう。
したがって、法律としては成立しても仕方ないのかもしれませんが、ただ、時期が問題です。
宝飾業界は、ただでさえ苦しい状況が続くなかで、ショッピングローンへの規制で、ローンによる高額品販売が縮小しています。そこへ来てのこの法律ですから、高額品の販売はさらに難しくなることは避けられません。
例によって、日本ジュエリー協会は何の手も打っていないでしょうし、高額品の販売は、季節の流れとは逆に、厳冬の季節を迎えそうです。



技術が作るデザイン(2/29)
ニーシングのテンションリングがマーケットに強烈なインパクトを与えたのは、新しい合金技術が可能にした画期的な石留め技法が生み出す、斬新なフォルム(デザイン)の美しさでした。
こうした、新技術が作り出すデザイン事例は、古代エトルリアの粒金技法から、ブチェラッティのシルクラインまで、宝飾史を紐解けば数多く見出せます。
フランスには「メチェ」という概念がありますが、わたしの理解ではこれは「技術とアートの融合」を意味しています。本来、ジュエリーほど、この概念を体現しているものはないはずなのですが、ジュエリーがつまらなくなってきたのは、この原点ともいえる「技術とアートの融合」という位置付けから遠ざかっているからではないか、と思うことがあります。
カタチやデザインが、ある技術の裏付けをとおして必然的なものとして生まれたとき、それは美しいものに昇華します。そういう意味では、ジュエリーデザインはペーパー上では成立しないものだし、本来そういうものではない、ということです。
そんなとき、右のリングをみつけました。作者は黒川興成氏で、こういうデザインは、地金と四六時中向き合い、どうすればこの地金の美しさを引き出せるかを模索した人にしか出来ないもので、しかも表面に施された独自のアラシ技術によって、繊細な美しさを体現しています。
技術が美しいデザインを作る見本です。



「良いジュエリーは循環する」(2/19)
心あるジュエラーたちが「100年後にも残るジュエリーを作る」と意気込みを語ります。それくらいの志で、良い素材にしっかりした加工を施し、100年後にも評価されるようなジュエリーを作ろうではないか、と抱負を語っているわけで、これは素晴らしいことです。
では仮に、それに値するジュエリーが作られたとして、そのジュエリーの行く末がどうなるかを辿れば、きっとそれはさまざまな人の手に渡ることになるに違いありません。良いジュエリー、素晴らしいジュエリーとはそういうものであり、そういう風に未来に生き残っていくものが、良いジュエリーの条件といえるでしょう。
そういう観点で見れば、ジュエリーの価値というのは、それが二次市場でどう評価されるかで決まってくるということになります。歴史に残るとはそういうことであり、二次市場で評価されないものは、いずれ消えていくのです。
では、いまの日本で作られ、売られているジュエリーはどうなのか、です。
残念ながら、それらのほとんどは、消えていく運命にあると思われます。しかしそれは、それらが「良くないジュエリー」だからというわけではなく、日本にはまだジュエリーを受け継いでいく二次市場が整備されていないから、という理由からです。
循環するインフラが作られなければ、「良いジュエリー」が「良いジュエリー」として生き残っていくことは出来ないのです。早急な整備が必要です。




宝飾はロングテール・ビジネス(2/8)
正確な数字は忘れましたが、日本で単一アイテムでもっとも売れたのは、かつての大沢商会が売っていた「ブルーリバー」のダイヤモンド・リングのあるデザインで、確か延べ2〜3千点にもなっていたのではないでしょうか。当時、そのリングは社内では「鶴」という符丁で呼ばれており、デザインをしたのは、若くして亡くなったあるデザイナーでした。
もう、2度とそんな時代が来ることはないとわかってはいますが、「ロット」という言葉をこの頃は本当に聞かなくなったなァと感じ、こんな昔の話を思い出したりします。
宝飾は、もともとが一点一点の手作り商品です。そうあるべきなのが、高度成長からバブルにかけて、そうでない売れ行きを示した時代を体験してしまったため、そことの比較のなかで、とかく現状を嘆きがちになります。これはこれでやむをえないことかもしれませんが、しかし忘れてならないのは、宝飾品は元来そういうものではない、ということです。
アマゾン・ドットコムの成功の秘密として語られる「ロングテール論」に引き寄せて言えば、宝飾品は最初から「ロングテール」ビジネスの範疇にあります。であれば、凡庸なマーケティング理論は最初から度外視すべきで、一人一人の顧客との向き合い方にこそ全精力を傾けるべき商売であるはずです。


ロングテールの総和は、もしかすると全体の8割を占めることになるかもしれない、という逆転の発想こそが、新しい時代を引っ張っていく。


トップ20に4社が入る(2/4)
これは2005年の数字ですが、アメリカの宝飾販売企業のベスト20を調べると、TVショッピングの専門チャンネルが4社も入ってきます。右の表がそれですが、なかでもQVCが飛び抜けていて、他業態も入れた全宝飾販売企業でも4番目に入っています。
アメリカの世帯数は1億250万といわれていますから、カバー率は85%にもなり、この辺は日本と大きな違いがありますが。
ただ、日本にももこうしたTVショッピング流れが、いずれ来るのかどうか、です。いろんな意見があるようですが、日本で放送されているQVCやショップ・チャンネルの最近の動きを見ていると、アメリカまではいかないにしても、10万円以下のジュエリーではある程度のシェアをとっていくのではないか、と推測されるのです。
店頭よりもはるかに丁寧な商品説明、巧みな乗せ方、加えて何となく安そうに思える価格設定など、「よく練られているなァ」と感心してしまうことも稀ではありません。

ショップ名 宝飾関連年商額(百万ドル) 日本円
(110円換算)
視聴軒数
QVC 1,400 1,540億円 8700万軒
Home Shopping 420 462億円 8500万軒
Shop NBC 400 440億円 6000万軒
Jewellery Television 390 429億円 7000万軒



「紫の牛を売れ!」(2/1)
2003年、全米経営者が選んだベスト経営書No.1に選ばれたのが本書でした。
わたし自身、かなり前にこの本を読んでいたのですが、ついこの間終了したIJTなどの催事に行く度に、この本のタイトルを思い出してしまいます。
つまりは、「同質化競争」をいくらやっていても仕方ないではないか、「同質化」から離脱しなければ、待っているのは虚しい結果だけではないか、ということなのですが。
ジュエリーは、宿命的に小さく、あらゆる意味で、ディテールで勝負する品物です。したがって、ディテールの違いへのこだわりをなくしたら成立しない品物ですが、1万点、いや10万点にも及ぶディテールの違いを見せられると、「感動」よりも「疲れ」を感じてしまうのは、わたしだけでしょうか。
本書は、こう警句を発しています。
「マーケティングの正しいやり方、それは広告ではなく、製品を根本的に変えることだ」
「成熟市場では、危険を冒すほうが安全だ」
それくらいの覚悟で臨まないと、マーケットのうねりに呑み込まれ、結果を導き出すのが難しくなっていると思われるのですが。



「良いジュエリーは売れるジュエリー」(1/27)
こう断言するのは東京・有楽町でたいへんな集客力と売上を計上しているイベントを主催するM社の担当部長です。世の中をこれくらい単純に、明確に位置づけることが出来れば、どのようなものを見ても、風景が歪むことはないでしょう。
しかし実際は、必ずしも良く売れるものが良いジュエリーとは限りません。「なんでこれが売れなくて、こんなものが売れてしまうんだろう」といったことは、商品開発などに関わった人であれば、ほとんどの方が経験していることです。
それを総括して、「結局売れなかったのは、それが良くなかったからだ」と結論づければ、一旦は収まるかもしれませんが、商品開発の新しい動きを作り出すことは出来ません。
コンビニやスーパーでは、徹底したPOSシステムで売れ筋強化・死に筋排除を実施します。書店もこうした手法を導入して、偏った商品構成が蔓延した結果、良い書籍は売れなくなりました。
水は低きに流れます。悪貨は良貨を駆逐する、とも言います。コモディティ・グッズとは異なった引っ張りあげ方をしていかないと、ジュエリーの拠って立つ根拠は失われます。




「成功の復讐」(1/16)
経済界には「成功の復讐」というアフォリズムがあります。成功したのと同じ理由で失敗することがあるという教訓ですが、もっともよく起こるのが「量的拡大」による「成功の復讐」です。
企業は販売量を増加させることで売上を伸ばします。しかし、市場は無限ではないため、必ず「量的拡大」は大きな壁に突き当たることになり、「量的縮小」を余儀なくされ、衰退していくのです。
昨年頻発した「偽装問題」などもその典型例で、拡大することで業績は伸びているように見えながら、拡大することで品質管理を中心にヒズミが生じ、結果消費者を騙すことになって、成功したのと同じ理由から失墜するという事態でした。
有限の材料や鮮度を基準とした商品を扱う場合、量的拡大は極めて高いハードルなはずです。
宝石という品物は、この「量的拡大」という戦略ともっとも馴染みにくい世界に属しています。そもそもが同一品質の石なんてありえないわけですから、同じものを大量に販売することなどできるはずがありません。にもかかわらずテレビ・ショッピングなどでは「限定100個」とかいいながら色石の量販売などを平気でやっています。
「いや、あそこで売られているものは、そもそもジュエリーなんかじゃない」と見ればいいのかもしれませんが、消費者はそうは捉えていないでしょう。こうした企業がいつか「成功の復讐」に見舞われないことを願うばかりです。


成功のプロセスになかには、よく見ればすでに失敗の要因が潜在している。


資源大国ニッポン(1/12)
資源に乏しいと言われる日本に、大量の「金属資源」が存在することが分かりました。
本日付の毎日新聞が伝えたもので、それによると「物質・材料研究機構」が、製品や廃棄物に含まれる20種類の金属について国内の存在量をまとめ、透明電極としてディスプレーに使われるインジウム、電子部品に多用される金や銀、ハンダに使う鉛の4種類の推定量は世界一となったそうです。
自動車や電子機器などに使われて市中に出回ったり廃棄された製品に含まれるこれら金属の総量と、外国の鉱山の埋蔵量を比較した結果で、再資源化の重要性を示す成果として注目されます。
同機構は、輸出入量が分かる貿易統計や、財やサービスの流れをまとめた産業連関表をもとに推計し、それによると、インジウムが天然鉱山の現有埋蔵量の61%に当たる1700トン、銀が22%の6万トン、金が16%の6800トン、鉛が10%の560万トンでした。
こうした金属の多くが都市に存在するため、「都市鉱山」と呼ばれており、希少金属(レアメタル)の価格高騰で都市鉱山への産業界の関心が高まっていますが、具体的な量は不明でした。
同機構の原田幸明(こうめい)・材料ラボ長(材料環境学)は「都市鉱山を活用すれば、日本も世界有数の資源国として、新たな経済効果をもたらす」と話しています。




「希少性」という絶対的価値(1/8)
ジュエリーがジュエリーとして存立する根拠は、「美しさ」「永遠性」「有限性」、そして「希少性」だといいます。あくまで限られた材料、資源を使いながら、美しく、有限なものを提供するのがジュエリー本来のありようです。
この視点でみれば、ジュエリー産業などというのはそもそもありえるはずがないわけで、あるとすればそれは「まがいものジュエリー」ということになります。
ある加工会社から、「ミャンマー産の無処理ルビーで有名な会社の仕事をしているが、無処理なんだろうがまったく美しくない。こういうことでいいんだろうか?」という電話をもらいました。
加熱処理、加圧処理はいけないとして、無処理ルビーを扱う。それはいいとしても、美しくないルビーを「これは無処理だ」というセールスは本末転倒もいいところで、そもそも美しくないから加熱・加圧をしていたのです。
こういう勘違いのすべての前提は、ジュエリーがジュエリーとして成立する「希少性」という絶対的価値を忘れているからです。
ヨーロッパの高付加価値ジュエリー会社のほとんどがファミリー経営になっているひとつの理由は、ジュエリーの品質を維持するためには、企業化がそもそも出来ないからです。ジュエリー産業というのは、そもそも語義矛盾を孕んでいます。
アメリカのハリーウインストンが、カナダの鉱山会社「アバーダイヤモンド」の傘下に入りましたが、これでハリーウインストンは終焉したというべきでしょう。鉱山会社というのはさまざまな品質の量を出すところで、希少性を求めるところではないからです。希少性を求めないわけではないですが、それだけでは鉱山会社が成立しないからです。




ある内部告発(1/4)
新年のお屠蘇気分に、冷水を浴びせるような内部告発メールが届きました。
内容は、ある宝飾店が、買取した品物を新品仕上げし、それを新製品として販売しているというものです。
わたしがかつてその店を訪ねたことがあることから、とりあえず当方へ告発してこられたのだろうと思います。
告発してきたのはその店の元スタッフで、その人はその店のオーナーに、これはいけないことだと、何度か諌めたようですが、オーナーは聞き入れようとせず、改めなかったということです。
腕のいい加工職人に新品仕上げを頼むと、すべての製品はまっさらの新品になってしまいます。宝飾品が他の物品と違って永遠的価値を持つことの、これはひとつの証明でもありますが、しかしこのことは、還流品を新品として販売していいということではありません。
自動車や家電製品と違って、それが新品か否かは素人にはわからず、玄人でもわかりにくいのがジュエリーの特質ではあります。しかし、これはモラルの問題として、一旦人に渡った品物は、あくまで中古品と明記して販売することを基本ルールとすべきです。
それをしなかったら、消費者からの信頼は潰えてしまいます。
ただし、買取った品物を材料に戻してしまえば、その段階で新品も中古品もなくなると考えます。欧米の一流宝飾店は、還流品も含めて、さまざまな方法を駆使しながら希少で美しいダイヤモンドや色石を探し出し、それを新製品に仕立てています。
そのとき、この石はどこで入手したなどといったことは、一切公開することはありません。ジュエリーとはそういうものですし、ジュエリーの素晴らしさのひとつもそこにあると考えます。
この店のオーナーには、近日中に注意しようと思っていますが、似たような話は他にもあるのではないかと危惧しています。



明けましておめでとうございます(1/1)
日本も、世界も、わが宝飾業界も、課題山積の年越し、新年となりましたが、こういう状況はしかし当分続くことになるのでしょう。
一番の問題は、政治、経済、そして業界のどの分野でも、未来への明確なビジョンを語れる人材がほとんどいないことです。それほど、今の状況は複雑で見えにくいということなのでしょうが、そんななか、わたしが知っているなかでは唯一と思える逸材が梅田望夫氏です。
web進化論」をはじめとした氏の論考には、インターネットをベースとした世界のビジョンが語られていて、技術論を超えた新しい世界観が見えてきます。
ここ数年は何かとエコノミストが情勢分析で幅を利かせてきた感がありますが、見えてくるのは肥大化した余剰資本に翻弄される世界の不安定さばかりです。
webの未来には、経済原理に縛られながらも、ネットワークがもたらす新しい人間像と社会の形が見えてきます。ここに賭けてみるのも悪くないと思います。
なお、梅田望夫氏は、「宝石」「宝石と宝飾」の著者故梅田晴夫氏の長男です。



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