おまかせ!ジュエリークリニック



デザイナー・ブランドが売れるワケ
 卸会社が主催するいわゆるユーザー展では、最近デザイナー・コーナーが人気となり、売上の中心を占めるようになっている。二〇人近いデザイナー・コーナーを並べる展示会もあり、デザイナー花盛りである。これを見れば、いまの顧客が何を要求しているのかの手がかりが、鮮明に見えてくる。
 
 デザイナー・コーナーに行けば、そこにはそれをデザインした本人が立っている。そして、ひとつひとつの商品について、本人からそのデザインの由来が解き明かされ、苦労した点まで話される。じっくり聞いた顧客には、もはやそれはたんなる商品ではありえない。その商品のストーリーが出来あがり、ドラマが見え、完全にコト化されてしまう。価格とか財産価値はもはや二の次になっている。顧客はそのドラマの中に身を置くのである。
 
 ジュエリーのそういう価値が、いまの顧客、とくにジュエリーが好きな顧客には重要なのである。ユーザー展に招待される顧客は、どちらかといえばヘビーユーザーに分類される。そういう顧客にはとくに、ジュエリーのコト的価値が重要なのである。素材、デザイン、加工にともなう付加価値、その中にあるストーリーこそが消費の対象なのである。

 それを誤解する宝飾店や卸会社がある。そのデザイナーの作品そのものが絶対的価値を持ち、どこへ持っていっても売れるのではないかと考えるのである。次には、宝飾店の一角にそのデザイナーの販売コーナーが出来上がる。カウンターにはそのデザイナーのプロフィールが紹介され、いかに実績あるデザイナーかが強調される。しかし、残念ながら顧客からの反応は芳しくない。

 こういう誤解は、ジュエリーの何が消費されているかを、正確に把握していないことから生まれる。当然宝飾店としても、デザイナーから一点一点の商品に隠されたストーリーを事前に聞き、それを顧客に伝える努力はしているのだろう。しかし、消費されているものがストーリーである限り、本人から聞くのとそうでないのとでは、そこに雲泥の差が生まれてしまう。

 例外もないではない。ある高名なデザイナーのコレクションは、本人が売ることはほとんどなく、そこのスタッフが受け持っているが、よく売れているようだ。しかし、それはそこのスタッフの能力が卓越しているからで、一般的には非常に難しいことだ。

 それよりも、宝飾店自らが商品開発し、そこに生まれるストーリーを顧客に話した方が数倍説得力があるだろう。時間はかかるが、そこにこそジュエリーを販売することの意味がある。