おまかせ!ジュエリークリニック



SPJが主役になるジュエリー・ショップ
 自店のオリジナル製品を作り、販売する宝飾店を、本書ではSPAにならってSPJ(Speciality store retailer of private label jewelry)と呼ぶことにする。このSPJは、少しづつ増えながら、いずれは日本の宝飾店の中心勢力になるだろう。ジュエリー先進国のヨーロッパでそうなっているのだから、日本もいつかそうなることは想像に難くない。二十一世紀の早い時期にそういう状況になってしまうかもしれない。
 
 日本におけるSPJの先達はミキモトである。そのミキモトが、波瀾の時代を乗り越えて現在も日本の宝飾店のトップの座にい続けているのは、やはり自らの力で素材、デザイン、加工の最高の品質を作り、提供し続けてきたからだろう。他では入手できない、ミキモトにしかないオリジナル製品が提供され続けてきたからこそ、いまもミキモトはミキモトなのである。他の勝ち残っている宝飾店も同様である。この真理はこれからも変わらない。
 
 SPJの問題点は、作った商品を売り切っていく販売力とのバランスである。作って売ることの優位性の本質は、商品の深い理解による販売力の向上にある。ところが、作る商品量が増え、作ること自体がシステム化していくと、初期の目標が曖昧になり、作ることそのことが目的になったりする。製作点数が増えれば、分業化も進むだろう。そうこうするうちに、製作と販売が違う方向に進み始め、製作サイドはうちは販売力が弱いと嘆き、販売サイドではうちの製作は売れないものばっかり作ると反目しあったりする。よくある話だが、これでは仕入商品を販売しているのと何ら変わらない。
 
 作って売ることの優位性を維持するには、作る側と売る側の問題意識の共有、方向性の同一化が欠かせない。その最小単位は、オーナー自らが作って売るというクラフトマン・ショップやデザイナー・ショップだが、そこから少しづつ規模の拡大がおこなわれることになる。
 
 しかしながら、店頭の製品すべてをオリジナル製品にすることは、差別化という意味では理想的だが、相当の資本力と販売力がなければ難しい。そこを目標に努力することは必要だが、誰にでも出来るわけではないし、商品効率はどうしても落ちてくる。
 あくまで商品在庫の効率化、販売力を前提として取り組まないと、初期の目標がいつまでも達成出来ないことになりかねないので注意を要する。
 
 このように、SPJは必ずしなければならないテーマだが、簡単に出来ることではない。さまざまな事例が、これからまさに作られていくことになる。