おまかせ!ジュエリークリニック



顧客の予算対応で力を発揮する空枠
 現在、宝飾店に持ち込まれるリフォーム依頼の1/2は、予算三万円以下である。理由はこれまでお客が買ってきたジュエリーの1/2がその価格帯であったこと、チェーンストア等の店頭を見て、自分が欲しいデザインの商品がだいたいそういう価格帯にあるから、その予算で出来るだろうと考えているからである。要は量産品の価格が、顧客の認識する価格体系として浸透しているのだ。当然といえば当然である。
 
 しかし実際は、オリジナルで製作した場合、中石持込みの場合で、左表のような価格になる。原価で四万五千円〜五万円、折返しで十万円、三倍付けでは十五万円である。
 
 量産品の場合は、折返しで加工代二万円だから、なるほど三万円というのは妥当な予算なのかもしれない。
 宝飾店としては、リフォームの場合はそれだけのコストがかかるということを、一点ものの価値の貴重性を前面に出して説明していくが、納得し、ではそれでお願いしますという顧客はそういるものではない。

 そこで使うことになるのが空枠である。一点ものの場合、製作費の九割を占めるのはデザイン料と原型製作費であり、空枠はそのコストが量産ベースで消化されているから、量産品と同じ価格で対応できることになる。どこの空枠メーカーにも、加工代+地金代で一万五千円以内に収まる製品が多数用意されており、結局空枠対応がリフォームの中心を占めることになる。空枠メーカーへの発注原価の倍付けで、だいたい顧客の予算に当てはまる。

 空枠にはもちろんそれ以外にも豊富なデザインと価格のバリエーションが用意されている。したがって、空枠だけでもリフォーム対応には支障をきたさないかもしれない。製品としての完成度とコストのバランスをみたとき、日本の空枠はかなり高いレベルに到達していると思われるからである(安易なコピー製品や、ヒット・デザインのゴム型を取ったものなど、いいかげんな空枠も多数あるが)。

 空枠対応がリフォームの中心になる理由はこういうことからだが、しかしこれに甘んじていると、オーダー対応やオリジナル商品開発にはいつまでたっても到達出来ない。オーダーでは先述したコストがどうしてもかかることになり、そのコストを納得してもらう努力をし続けることが欠かせないからである。

 まずは三万円という予算を五万円に引き上げるにはどうすれば良いのか、さらにそれを十万円まで持っていくセールス・トーク、そのノウ・ハウにはどういうものがあるのかなど、さまざまな学習が必要になる。



●リフォームをオリジナル・デザインで実施するときの基本料金
                  上代
 1、デザイン料        20,000円(原価10,000円)
 2、原型制作費        60,000円(原価30,000円)
 3、鋳造費           2,000円(原価 1,000円)
 4、仕上げ加工代        6,000円(原価 3,000円)
 5、石留代(中石1個)     2,000円(原価 1,000円)
                90,000円
これに地金代、脇石がある場合には脇石代が追加されるから、最低でも10万円がかかることになる。                             


●量産品の価格構成

 1、デザイン料                  10,000円
 2、原型制作費                  30,000円
 3、鋳造費(30個製作の場合) 800円×30= 24,000円
 4、仕上げ代        2,000円×30= 60,000円
 5、石留代(中石1個)   = 800円×30= 24,000円
                         148,000円
                          @4,933円

加工費のメーカー出し値(粗利3割)          7,100円
卸出し値(卸粗利2.5割)              9,500円
小売上代(折返し)                 19,000円


このように、量産品と1点ものの間には通常でも約5倍の差が生じる。お店はこの差を商品の付加価値として埋めることで、顧客を納得させる方法を持たなければならない。オーダー、リフォームの本質的問題がここにある。