おまかせ!ジュエリークリニック



能力と在庫は反比例する
 ジュエリー・ビジネスの最大のリスクは在庫にある。一般的に、商品販売に関わる商売のリスクは在庫にあるが、ジュエリーの場合は特にそれが大きい。理由は、
一、商品単価が高いこと、
二、商品回転率が遅いこと、
三、ゆっくりではあるが確実に流行があり、時期を逃すと売れにくくなること、
四、かつては素材の値上がりがあったが近年はそういうことがめったになく、滞留するほど価値が下がること、
が理由である。

 ヨーロッパの宝飾店を覗いてわかることは、一部を除いて店が小さく、店頭在庫も少ないことである。ジュエリー先進国であるヨーロッパで、なぜそういう形態の店が主流となったのかを考えなければならない。おそらく、そこには「在庫を多く持ってはいけない」という歴史の教訓が生かされている。

 少ない商品に満足していないのは顧客ではなく、販売員である。少ない商品では売上を達成できないと思うから、できるだけ多くの商品を並べようとする。だが実際は、顧客は自分が欲しくない商品をいっぱい見せられても、少しも満足はしないものである。商品の豊富感とは、顧客が欲しいと思う商品がいっぱいあることで作られるものであり、顧客が魅力的でないと思う商品がいくらいっぱいあっても、豊富感は生まれない。

 商品がいっぱいあると、この店にはどんなジュエリーがあるのかということも顧客に伝わりにくくなる。店の個性がなくなり、差別化も出来にくくなる。これは、専門店として大きなマイナスであろう。

 このように、商品を増やすことは「百害あって一利なし」なのだが、しかし、一方的に減らすばかりでもまたダメになる。機会損失が生じるからである。しなければいけないこと、それは、顧客の要望を正確に受け止め対応する能力の訓練、店頭に顧客が欲しいという商品がなければ探し出し、それでもなければ製作するというノウハウと体制の確立である。これが出来るのがカスタム・ジュエラーである。
 カスタム・ジュエラーには、どこに何があるかという情報がいつも頭に入っている。素材、デザイン、加工についてもエキスパートである(自分がすべてをしなくても良い。エキスパートと繋がっていれば良い)。

 誰でも簡単になれるというものではないが、この能力を身につけなければこれからは宝飾店をやっていけなくなる。能力と在庫は反比例するのである。