おまかせ!ジュエリークリニック



寿司屋のようなジュエリー・ショップ
 カスタム・ジュエラーを目指し、日々努力を重ねている福島県にある優秀な宝石店オーナーと話したとき、「私の理想とする宝石店は寿司屋のような宝石店です」と語っていた。顧客にゆっくり寛いでもらい、注文を聞き、最上のネタに、最上の技術を施して、「ハイ、お待ちどう」とお客の前に提示する、ああいう風な宝石店ができないかと考えていると、そのオーナーは語っていた。
 
 確かに、カスタム・ジュエラーを飲食店の中から例を探し出すとすれば、寿司屋というのが一番ピッタリするのかもしれない。理由は、自分の持っている技術力を、接客をとおして直接ユーザーに饗するという、よく考えれば稀な仕事として寿司屋は成立しているからである。普通のレストランでは、コックという技術屋は厨房に入ってしまい、お客と直接接しない。

 この宝石店のオーナーは職人出身であり、日頃から「職人の自立」というテーマに関心を持たれている。寿司屋は材料の仕入から仕込み、調理、接客まですべてを仕切っており、「職人の自立」という意味で、一つの理想的な完成形を作っている。このオーナーが寿司屋に注目されたのもそういう理由からだろう。

 ジュエリーは本来、デザインと加工の魅力から成り立っている。プロとしてかなりの年月を経なければその良し悪しを見分けることは難しいが、それだけ奥深い魅力と価値をデザインと加工は持っている。しかし残念ながら、この二大ポイントの担い手であるデザイナーと加工職人に対する評価が、この業界では高くない、というよりもハッキリ言って低い。その大きな理由は、多段階化した流通にあるが、したがってこれを解決するにはデザイナーや加工職人みずからが直接ユーザーと向かい合うしかない。自分の技術力と想像力を直接ユーザーに働きかけることで、その価値を売っていくのである。ユーザーにとっても、この方がデザインや加工についての説明を直接聞くことが出来て、納得した買い方が出来るというメリットがある。

 カスタム・ジュエラーがほとんどを占めるヨーロッパでは、デザイナー・ショップやクラフトマン・ショップが数多く存在する。日本ではこれまで既製品を陳列していく「品揃え型」が主流を占めてきたが、これからは次第にこうしたデザイナー・ショップやクラフトマン・ショップが各地に生まれてくるだろう。市場が成熟し、かつ本当にジュエリーが好きな人が市場の主役になるとき、商品のポイントを前面に出したショップこそ支持されるからである。

 時代はゆっくりしか変わらないが、変化の胎動は確実に起きている。