おまかせ!ジュエリークリニック



修理はオーダー、リフォームの原点
 顧客から宝飾店に持ち込まれる依頼の九割は、修理(リペア)である。切れたチェーン、ストッパーのなくなったピアス、石が落ちたリングなど内容はさまざまだ。顧客は、自分が持っているジュエリーのなかで、破損しているものや、使えなくなっているものを、修理してもう一度生かそうと考え、宝飾店に持ってくる。
 
 面倒な注文も多いが、しかしこれが実は、リフオーム、オーダー受注という宝の山の、重要な導入部と考えてよい。昔買ったリングのサイズ直しを依頼にきた婦人は、それを依頼する過程で、実は使っていないジュエリーを他にもいっぱい持っていることを打ち明けるかもしれない。そのとき、「それはもったいないですね。持ってきていただければ、新しいジュエリーに蘇らせてさしあげますよ」と水を向けることが出来る。できれば、自店のリフォーム・システムの概要を説明してみる。リーフレットが準備できていて、それを渡せればもっと良いかもしれない。
 
 すぐに反応する顧客もいれば、時間のかかる顧客もいるだろう。しかし、いつかそのお客は、リフォーム、オーダー依頼という宝の山を抱いて、来店することになる。その確率はかなり高いのだ。
 
 修理の単価は、パーツの取換えで千円程度からである。しかしその千円が、次にリフォームム、オーダー受注という、金額的には数十倍の売上に繋がるのである。
 
 こんなこともある。たんにサイズ直しだけを頼みにきたたお客だったが、店舗のなかの商品をみているうちに気に入ったデザインが見つかった。そのお客は、持ってきた商品の石だけを生かして、このデザインに作り替えてくれないかと依頼内容を変えるのである。
 このように、修理は実は、水面に現れた氷山の一角であることが多い。顧客は、その数十倍のニーズを、実は潜在的に持っている。顧客は自らのニーズを、全部明確に意識しているわけではない。ただ漠然と感じているだけであり、お店サイドからの提案があって、はじめて「ああ、じゃあ頼んでみようか」ということになるのである。
 
 リフォーム、オーダーは修理が原点であり、出発点である。修理にリフォーム、オーダーのすべては集約されているといってもよい。
 必要なことは修理の知識と経験である。これによる信頼が、その店の全体の信頼を形作っていく。ある職人は好んでヨーロッパの製品の修理を引き受けているが、その人によれば、製品を知る上で修理ほど勉強になるものはないという。修理こそはすべての原点かもしれない。